『長期優良住宅』の概要
「長期優良住宅」は、耐震性が等級2以上、劣化の低減や維持管理の等級が最高レベルの3であることや、断熱性能に関しては次世代省エネルギー仕様(等級4)をそれぞれクリアしている必要があります。そういう意味では「長期優良住宅」が満たすべき仕様は、建物の性能としては、大変バランスのとれた仕様です。
★それに何よりも、国の補助金が通常で100万円つきますのでお勧めです。(上野)
この制度は、以前からある「性能表示制度」の等級を利用しているだけなのですが、「性能表示制度」は建築主自らが、それぞれの等級の意味を知って、自分たちで等級を選ぶ必要があったのですが、この制度ではそれぞれの仕様をバランス良く配置しているために、建築主が考える必要も選ぶ必要の無く、トータルバランスの取れた建物を造ることが出来るというメリットがあります。
税制面でも優遇税制が設けられています。デメリットは、図面審査はあるが、工事中のチェックが一切無い・・と言うことでしょうか。
★チェックが無いと、施工能力による性能のばらつきが出ますので、大変大きな問題と言えます。この点は、細心の注意が必要でしょう・・・(上野)
まだまだ、「長期優良住宅」の仕様で建てるなら、追加工事が100万円~200万円、といった丼勘定で見積もりを上げてくる住宅会社も多いようですが、それでも今お勧めの制度です。結構使われている方が多くなっていますから、これから建物を考えている方は是非、チェックポイントの一つにしてみてください。
長期優良住宅の仕様は、耐震性、耐久性、維持管理、断熱性など建ててからでは変更出来ない住宅の骨格となる、見えない部分の性能を高めています。
★この部分が特にお勧めですね(上野)
これからの時代は、使い捨てでなく長持ちする建物が求められる時代です。そして、これからの長寿社会で自分の寿命よりも住まいのほうがさきにくたばってしまっては困りますね。 その様な時代背景を受け、平成21年6月4日から、新しい制度として「長期優良住宅制度」というものが始まりました。一時200年住宅といわれていたものを制度化したものです。
似たような制度に性能表示制度いうものがあります。これは、耐震性や耐久性(劣化の低減)、維持管理、断熱性など8つの項目に対して、自分が取得しようとする性能を決めて設計し、それを設計段階と工事段階でチェックしてもらう制度がありましたが、この長期優良住宅の制度では次のようなメリットがあります。
『長期優良住宅』ではバランスが取れた建物性能が取得出来る
いちいち性能を自分で考えなくても、たとえば耐震性は等級2以上。維持管理や耐久性は最高等級。断熱性は次世代省エネルギー仕様にしなければならないなど、制度そのものが必要な仕様を決めているために、あれこれ考える必要もなく、この制度を利用するだけで建物を長持ちさせる仕様が盛り込まれています。
では、この「長期優良住宅」の仕様は、どの程度のものが必要なのでしょうか。それを簡単に表したものが下表です。
耐震性は耐震等級2。劣化対策と言われる耐久性の関する仕様は最高等級の等級3。維持管理の仕様も最高等級の等級3。そして、省エネルギー性向をしめす断熱性も最高等級の次世代省エネルギー仕様が必要となっています。言い換えれば、これらの仕様は、建物が建った後でやり換えが出来ない、そして、隠れてしまう部分がほとんどです。建物の骨組みをしっかりさせて、長持ちするように・・という仕様ですね。
『長期優良住宅』と平均的な住宅との違い
次に、平均的な住宅の仕様とどのように違うのでしょうか。いわゆるハードルの高さですが、平均的な住宅の仕様という統計データそのものが無いために、ここでは当サイトで行っているサポートサービスの住宅1500件のデータを平均的なデータとして考えてみます。
そうすると上の左図のように、大手ハウスメーカーではほとんどが標準仕様として耐震性・耐久性、維持管理、断熱性などは最高等級となっていますが、大手ハウスメーカーでも仕様の低いものや、他の一般的な住宅会社の平均的な仕様、特に建売系や建築条件付きなどの建物では、上図のように、耐震性は概ね等級2程度の実力があるものの、断熱性、耐久性の面ではワンランク下。維持管理では等級1と及びません。
★大手住宅メーカーのカタログの数値や営業トークの中で出る数値が、実際どのような内容で、どのような仕様なのか、そして希望の価格の建物が本当にその数値なのか、しっかりと確かめる必要があります。(上野)
『長期優良住宅』はハードルがどのくらい高いのか?
中古住宅として売却するときでも、「長期優良住宅」としてのお墨付きを見せることが出来ます。
丈夫な造りをしています。と言うだけでは誰も信用してもらえませんが、「長期優良住宅」で作ったと言うことが分かれば、先に書いたような性能面がはっきりしていますから、アピールできるポイントとなります。耐久性(劣化の低減)、維持管理、そして、次世代省エネルギー仕様までもしなければならないとなるとなにかハードルが高そうですが、そうでもありません。上の平均的な仕様からなにをプラスすればよいのかをシミュレーションしてみましょう。
◆耐震性 +10万円
平均像は、耐震等級2程度の実力を持っているのですから、工事のコスト自体はほとんどかかりません。
◆耐久性(劣化の低減) +数万円
サイディングではほとんどの場合追加費用無し。外壁モルタルなどの湿式の外壁の場合は、外壁通気工法とするために、専用の通気可能な防水シートを使う必要がありますから、少しアップします。
◆維持管理 +数万円
これは、さや管方式の排水管にかえればクリアするような状態ですから、これもあまりコストアップはありません。
◆断熱性 +30万円 (Ⅳ地域の時)
もっともコストがかかるのがこの仕様ですが、でも断熱材に凝らなければサッシは、普通のアルミサッシで良く、ペアガラスも今時標準ですから、後はもっとも安いグラスウール系の断熱材の厚みを増せば良いだけです。
★「その会社が、どのくらいまで性能を上げた方がいいと考えているかを聞く」、「ご自分でもその内容を理解する」、そして最終的には「ご自分の考えと判断で長期優良住宅を作り上げ、必要なコストアップを見極める」、というのが理想と思います。
そしてCMシステムネットワークでは、それらが理解できる無料勉強会を開催しています。(上野)
『長期優良住宅』は業者選びの値踏みにもなる
この制度を使うためにはある程度の技術力が必要です。サポートサービスの事例でも耐震等級なんかあることも知らずに漫然と耐震設計(耐力壁などの配置)をしている設計者が数多くいます。
そんな設計能力の低い業者は工事監理も下請け任せになりがちです。「長期優良住宅」の制度が使えるということは、一定の技術力が備わっていると考えることが出来ますから、一種の業者の値踏みに使えます。
標準仕様化の流れ!!
(社)住宅精算団体連合会という業界団体が、「長期優良住宅」に仕様変更するためには、木造住宅で33,000円/m2もの費用がかかると試算しています。105m2(35坪)の住宅なら346万円もの追加工事が必要・・となり、-坪当たり10万円のアップ-ですが、こんな馬鹿げた費用はありません。業界団体のため、消費者が見たときのことを考え、このような過大な費用を演出しているのでしょうが、あまりに大げさで非現実的な数値です。
土台も防腐塗料ではなく、ヒノキの芯持ち材を使おう。柱は総檜だ・・。断熱材は良い物を使い、サッシは樹脂サッシを入れよう・・・と言い出せばきりがなく、限りなくコストは上がっていくのは仕方ありませんが、「長期優良住宅」制度の最低限の仕様をクリアさせればよいのであれば、外壁サイディングで平均的な仕様の建物(建築条件付きで売れている平均的仕様)では、かかるコストはせいぜい4~50万円程度のアップなのです。
税制面で優遇され、優遇金利がある。
建物の登記をするときに必要な登録免許税が、通常0.15%の税率が0.1%になります。そして、建物の不動産取得税の控除額が増える。普通1200万円の控除額から、1300万円の控除に100万円増えます。さらに、建物の固定資産税の減税期間が伸びる。 普通、固定資産税の住宅減免期間は3年なのですが5年間に延長されます。
所得減税が100万円上乗せ。 500万円の所得減税に100万円をプラスする所得減税が打ち出されています。金利面では、フラット35Sが使え、フラット35Sを使うことで、当初10年間年1%優遇、11年目から20年までは0,3%優遇されます。
「長期優良住宅」の問題点は、申請後は誰も見ていない事
制度の建前は立派でも落とし穴もあります。それは、書類審査をするだけで現場審査は行われないことと、点検計画を提出する必要はありますが、細目は全て建て主に任せられており、点検も自主点検です。つまり、工事で手抜きをしようが、間違った施工をしようが、完成後の点検が行われていなくても、形の上では申請のとおった「長期優良住宅なのです」
★この問題は大きいです。私たちの目から見ると「長期優良住宅」の制度は、建築業界の底辺を押し上げてくれますし、喜ばしいことなのですが、まだまだ表面だけの工事で中身の伴わない会社が多いことも事実です。一般消費者が、本当に奥深い部分まで心から教えてくれるアドバイザーに出会える機会が普通にどこにでもある、といった社会になって欲しいものです。(上野)
「長期優良住宅」の仕様 「維持管理、劣化の低減-等級3」
『維持管理の配慮』の等級を3にするのは難しいことは何もありません。基本は
1.基礎コンクリート内に給排水管を埋め込むな。
さや管方式の排水管を使い、給水管はヘッダー方式を作用するだけ。でも給水管のヘッダー方式はほとんどの住宅会社が採用していますから、後は排水管をさや管式にするだけです。材料費のわずかなアップだけです。(写真)
2.2階に給排水を持ってくるなら、その下に点検口を作れ。
排水管などを下から見られるように1階の天井に点検口を作るだけですから、これも1万円程度の費用アップです。
3.縦管があるところは、点検口を作れ。
これも塩化ビニールの壁用の点検口が市販されていますか、点検口代1カ所わずか数千円のアップです。 代表的で大事なものを書くとこれだけのことをすれば良いのですから、等級3にするためには、要所に点検口を作るという設計上の配慮と、排水管をさや管式に変えると言うだけのことなので、数万円のアップ程度で十分に対処出来るのです。
これ以外にもちろん、土台はヒノキ、柱もヒノキ・・・なんて素材に凝っていけば値段はうなぎ登りです。この制度の目的は、最低限の建築材料を使っても、50年程度は十分に長らえる建物・・という感覚で捉えた上で、別の視点として素材の吟味を行った方が良いでしょう。
なぜなら、今の建物はいくら木材が長持ちしたとしても、建物に使っている金物などの金属類の腐食対策はまだまだで、木材よりも金属類の痛みが早くなってくる可能性が高いのです。(そのために、金属、金物の腐食対策をしない限り200年持つ住宅というものは現実に不可能です)
「長期優良住宅」の仕様 「次世代省エネルギー仕様-等級4」
長期優良住宅の使用をクリアする上で、もっともコストがかかりそうなのが、「次世代省エネルギー仕様」のクリアなのですが、これも案外難しいものではありません。次世代省エネルギーの仕様を外から見ていると、なにか難しそうに感じるのは、実はいろいろな仕様が混ざり合って販売されており、住宅会社によって次世代省エネルギー仕様のギリギリの断熱性能から、非常に高い断熱性能を持っている建物まで、一緒くたに次世代省エネルギー仕様と言われているからなのです。
その一端を下の表にしてみましたので見てみましょう。 コスト算定の前提は、
- 省エネルギー仕様のレベルがある(建売レベル)
- Ⅳ地域・・関西、関東、中四国、九州地方の住宅という前提です。
●断熱材
これも種類を上げればきりがありません。最も価格の安いグラスウールから、ロックウール、ウールなどの天然素材、スタイロフォームに代表される板状断熱材、現場で吹き付ける発泡ウレタン、あるいはセルロースファイバー等々、コストもバラバラですが、もっとも安いグラスウールを中心とした場合であれば、端熱材の厚みを増せば良いだけなので、+20万円内外のアップで可能になります。
●サッシ
サッシのいろいろありますね、一般的なアルミサッシから、樹脂サッシ、木製サッシになるほど断熱性能も上がる代わりに、断熱材のアップよりはるかにコストアップになっていきます。でも、高いサッシに変えなくても、普通のアルミサッシで次世代省エネルギーはクリアするんですよ。
●ガラス
最高レベルはトリプルガラスですが、ペアガラスでも次世代省エネルギーはクリアします。
●防湿気密シート
次世代省エネルギーを調べた人なら、誰もが気になる気密シートを設けろ、気密値はいくらまで・・という規定は、実は今回の改正(平成21年4月)から無くなりました。そして、グラスウールなどの繊維系断熱材を施工する場合は防湿シートを設けろ・・というに規定が変わりました。まぁ、断熱材に付いている防湿層を使っても良いわけです。つまり、世の工務店が多く競い合っていた気密化競争など意味が無くなったのです。
●換気システム
換気システムの規定は特にありませんから、24時間換気の換気システムで最低限はクリアしています。
●クリアさせるだけなら、30~40万円アップのみ
標準的な断熱性能(等級3の省エネルギー仕様レベル)が備わっており、アルミサッシにペアガラスの建物なら、24時間換気など法的な義務ですからあって当然。つまり、断熱材の厚みのアップと防湿シートの施工をキチンとする程度のアップだけで、最低限の次世代省エネルギー仕様はクリアするのです。
「長期優良住宅」関連法省エネ法の法改正
平成21年の4月から、省エネ法が改正され、
- 気密性能の規定が無くなった
- 玄関土間の断熱などは省略出来る
- 床面積の2%までの窓は、ペアガラスにしなくても良い
などなど、規制が緩和され、次世代省エネルギー仕様の敷居も低くなっています。
簡単に言うと、Ⅳ地域では、ペアガラスが標準ついていれば、断熱材の厚みを増やすだけで、ほとんど次世代省エネルギー仕様をクリアさせることが出来る・・と考えればいいでしょう。
★でもみなさん!本当に「基準をクリアすればいいだけ」なら、それでいいでしょう・・・なんと簡単な事でしょう!でも本当にそれでいいんでしょうか?今まであまりこういうことに興味がなかった無頓着な住宅会社は、消費者がそれでいいと言えば「それだけ」のアップで長期優良基準をクリアさせるでしょう。
★でも私にとっては、本当の意味での「快適、健康、長持ち、省エネ」住宅を志す者にとっては、とてもとても低レベルに感じられてなりません。全ては家をつくる皆さんがどれだけ真剣か、本当にそんなものでいいのか?で決まります。・・・・一緒に勉強会で考えてみませんか!(上野)