対象拡大で節税対策需要が増加
相続税の改正で、2015年1月から基礎控除額が変わる。
定額控除が5000万円→3000万円、法定相続人比例控除が1人あたり1000万円→600万円にそれぞれ4割削減。
課税価格が8000万円で法定相続人が3人の場合、2014年までは8000万円-(5000万円+1000万円/人×3人)=0円で相続税はかからないが、2015年1月以降は8000万円-(3000万円+600万円/人×3人)=3200万円が課税の対象となる。
もし相続人が1人だとすると基礎控除額が=3000万円+(600万円/人×1人)=3600万円を超える遺産があると納税しなければならない。
これまで相続税は富裕層の問題と捉えられてきたが、この改正により都心など地価が高い都心部に住む人ならば十分に対象になる可能性があり、「節税」対策の需要が高まる。
実際には相続はまだ先だちしても、住宅の取得時に施せる「工夫」は少なくなく、提案が望まれる場合も出てくるだろう。今後は節税対策提案のバリエーションで受注に差が生じる可能性もある。
軽減特例を生かす
節税対策の基本は資産の評価額を下げることだ。実際に住居として使ってい(使う)人が相続する場合には、一定の割合で評価を下げる措置が設けられている。いわゆる「小規模住宅の特例」と呼ばれるもので、一定の面積まで評価額を8割減として算定する。
この特例の適用を受けられるのは、①配偶者、②同居している親族、③同居していないが家を持っていない(3年以内にマイホームに住んでいない)親族が相続した場合。
このうち②の同居の解釈として、相互に行き来ができない完全分離型の2世帯住宅は「別居」として扱われ、これまでは適用対象外だった。それが見直しにより14年1月から同居とみなされるようになり、特例適用対象になった。
2世帯住宅提案の自由度が高まり、相続税対策のオプションのひとつとして勧めやすくなっている。この小規模宅地特例の面積制限の枠が改正に合わせて 240m2から330m2=100坪に拡大・緩和される。一般的な人ならば、これにより課税の対象から外れることになる。
ただし、相続税やその特例は相続した時点の制度が適用される。その点を説明しないで提案を行い、いざ相続時に事情が変わっていれば問題になる可能性もある。当然だが、度を越した営業トークは厳禁だ。いずれにせよ、国・地方の財政が厳しいなか資産課税強化の傾向は今後も強くなることが予想される。相続税の動向は住宅市場にも大きく影響する。注視したい。
Check Point!
- 基礎控除が4割減、都市部中心に対象増加
- 小規模住宅の軽減特例は240→330m2に緩和
- 完全分離型2世帯住宅も「同居」扱いで節税に
◆定額控除と比例控除が減額
改正前後の基礎控除などの比較